盆栽には人の想いが詰まってる。だから捨てられず、手入れのはいってない盆栽が増えるんです【「ホースの中島由佳新作発表会」レポ前編】



 

【イベント概要】

2016年6月26日、別視点ツアーのサロンにて「ホースの写真家・中島由佳の新作発表会2016」を開催した。

ホース撮影歴6年。いままでに撮影したホースの数、約1300本。

独自目線で写真を撮りつづける中島さんの、路上スナップ写真の新作を発表するイベントである。

前編・後編にわけてイベントレポをアップする。

 

 

【ガイド】

●ガイド:中島由佳(写真家/twitterinstagram公式サイト

●お相手:松澤茂信(別視点ツアー代表)

 

 

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中島:写真家の中島由佳です。埼玉生まれ、東京在住です。武蔵野美術大学を卒業しまして、会社員をしています。
会社員をしながらカメラメーカーのコンペで賞をいただきまして、写真家としてのキャリアがスタートしました。

 

 

-なんで写真だったんですか?

 

中島:大学に入るときは、広告だとかアニメーションをやろうと思っていたんですけど、そのうちにむいてないなと思って、媒体を写真に変えました。
アニメーションは書くのにすごく時間がかかりますし、広告は大人数と仕事をしなければいけない。自分にはそこまで労力を費やして取り組みたいテーマがなくてどちらも挫折しました。
写真はデータをとっておけば、そのデータをまたあとで使って、違ったコンセプトで発表することもできるし、自分にとっていいメディアだなと思い積極的に取り組むことにしました。

 

 

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中島:これはおばあちゃんちの床(上の写真)なんですけど、最初はこのような女性的でかわいい感じの写真を撮っていました。でも、卒業制作を作らなければいけないので、ありきたりな写真ばかり撮ってられない。

というのも、卒業制作は、大学の研究にあたるもので、新規性というか「今までこういう作家がいて、でもわたしはこう違うんです」と提示して、発表しなければいけないと思っていたからです。

 

 

 

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中島:写真で何をどう表現したらいいんのかと悩んだ末に、フグ料理店の生簀のフグを撮った作品を作り、卒業制作では盆栽を持ってるおじさんの写真を撮りました。社会人になってからは被写体としてホースを選びました。

 

-なんでまた、盆栽をもってるおじさんなんですか。

 

中島:写真で出来ることは「いままで誰も記録していないことを記録すること」と「現代社会が抱える問題と技法をミックスすること」「あたらしい気づきを与えてくれること」だと思っています。
盆栽って、すごく手がかけられているので、基本的にお金がないと出来ない趣味なんですよ。
国の賞をとるようなものなら美術館に飾られたり、保存や記録をされてるんですけど、一般家庭で70歳、80歳のおじさんが育ててる盆栽は誰も記録してないのではないかと思い、卒業制作のテーマにしました。

 

 

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▲高松盆栽大会2014で撮影した写真

 

中島:盆栽は木をある決まったパターンに変形させて、鉢の中で1つの世界観をつくることが特徴です。
元々盆栽は、中国から伝わってきたんですけど、鉢の上に植物だけではなく、人形とか飾りを乗っけた盆景というものがありまして。
盆景と盆栽をまとめて盆景と中国では読んでいるようですが、日本では区別されているようです。

 

 

 

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中島:盆栽というのは、木を針金などで固定し変形させて樹形を定めていくのですが、その樹形にもある程度パターンが決まっているので、「ブロッコリーとかお花とかでも、写真を合成してなんとか盆栽のように見せることができるんじゃないか」と思いまして。
これ(上写真)を作って、ゼミの先生に見せたら「おまえはそういうコンセプチュアルな感じに走るな」と却下されて。やっぱり盆栽おじさんでいこうと。

 

-ほー、泥臭くいこうと。

 

 

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▲タイで見つけた盆栽のような植木

 

中島:これはタイで撮った盆栽のような植木です。

 

-さっきの「鉢のなかで1つの世界観を作る」って定義からすると、盆栽なのか疑問ですけど

 

中島:そうなんですよね、これを見ても盆栽じゃないなってみなさん思われるかと思います。樹形のパターンにのっとって手入れされていないからです。

でも、私は好きなんですよ、こっちのほうが。もともと枯れているものや、手入れが入っていないものが好きなんですよね。ちょっと雑にあしらわれてる盆栽。枝だけになってて。
まっとうに手を入れられているよりも、ちょっとほったらかれてかわいそうになってる植物にシンパシーを感じてしまう。そこで盆栽おじさんです。
70歳、80歳のおじいさんが20~30代の頃に盆栽ブームがあった。
お金も持ってるし、たくさん集めたけど、高齢になって自分の手がまわらなくなったときに、1つ何万円とかするんですけど、どうしても雑な扱いになる。
で、そのようなほったらかされている魅力的な盆栽をターゲットに撮影を開始しました。

しかし、盆栽がそのようになってしまった過程を知ろうとすると、どうしても持ち主に話を聞かなくてはいけなくなり、次第におじいさんの方にフォーカスが当たるようになってきました

 

 

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中島:人を撮るのが得意じゃないと思ってたんですけど、いざはじめると楽しくてですね
盆栽のことなんて聞いたら不審がられるかなと思いましたが、「なんでも聞いてよ!」と、どの方もとても丁寧に教えてくださって。

 

-にんまりしてますもんね

 

中島:でも、おじさんはお疲れなので15時くらいになると「眠い」「今日はもう帰ったら」とか仰るんですよね。だから、授業をさぼって15時前にはおじさんちに行って、写真を撮る。

 

-眠くなるの、はえー。

 

中島:この盆栽、幹を見ると、ウネウネしているんですよね。これ、樹形を作る際にワイヤーでぐるぐる巻きにして成長させながら矯正するんですけど、外しそびれてこのような形になってしまった。

 

-あ~、人工的にこういう形になってるんですね。

 

 

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中島:この方は、バイクの趣味と並行して盆栽をやってる。耳にピアスをしてかっこいいですよね。
かつては盆栽愛が強すぎて、家族旅行のときでも、1人だけ夜に帰ってきて、盆栽の世話をして、翌朝旅先に戻るということをしてたんですって。

 

-ハード過ぎる!

 
中島:盆栽って毎日手入れをしないといけないんですよ。
狙った場所に実をつけるには毎日早朝、綿棒で受粉をさせたりしないといけないようで。時間と手間をかけなきゃ、いい盆栽ってできないらしいんですよ。

 

 

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中島:これは畳屋さん。お父さんが盆栽をやってたんですけど、亡くなっちゃって、息子さんたちはどうしたらいいか分からなくなって2階に置いている。

 

-捨てはしないんですね

 
中島:亡くなったお父様の形見ということもあり、なかなか捨てられない。そうであるがゆえに、どんどん手入れがはいってない盆栽が増えてくる。
だいたいが現在進行形で盆栽に興味をもってるわけじゃないので、メダカとかアケビとかの違う物の話しを聞いてから「じゃあ、盆栽の話しを・・・」と誘導するわけです。

 

-ちょっと心が離れている盆栽がいいんですね

 

中島:そうです。バイタリティーがないとできない趣味だと思うのですが、そういった方は興味の幅が広すぎる傾向にあるようです。

 

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中島:盆栽おじさんと仲良くなるには、盆栽奥さんとも仲良くならなければ深いところまでいけないんですよ。

 

-盆栽奥さんってアンパンマンのキャラみたいですけども。盆栽って言っても、人間が重要なんですね。

 

中島:はい。盆栽のなかにはその人の人生が詰まっているので、あらゆる手をつくして聞き出さないとと思っていました。
盆栽奥さんは「旦那さんの相手してくれてありがとね」ってお菓子くれたりとか、素敵な方ばかりです。

 

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中島:フグは、大学の授業終わりに暗くなってて撮るものが限定されくるなかで見つけた被写体です。
インターネットで私の作品に興味を持ってくださる人の存在を知ることができたため、自信がつき、昨年個展を開催しました。

 

 

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中島:これなんかなんでこうなってしまったんだろうと。

 

-リア充のインスタみたいですね。

 

中島:生簀のなかのフグって、水槽を汚さないために餌を与えられないそうなんですが、そんな辛いなかでも面白い構図をつくってくれるなんて
被写体としてもポテンシャルが高すぎると思います。

 

 

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中島:これは、フグが人影に怯えている写真です。客寄せのために展示されているフグだけど、お客さん来ると食べられちゃうから・・・

 

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中島:個展を開催した際に、お客さんと触れ合いたいと思い、ゲリラフグ撮影会を開催しました。

 

-フグにとっては常にゲリラだと思うんですけど

 

中島:ゲリラというのは店側に対しての意味です。インターネットで集めた人と一緒にフグ料理屋に行き、♯ゲリラフグ撮影会
でtwitteに写真をアップするということをしました。

 

 

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中島:話が戻りますが、先ほど話した盆栽を撮ってるなかで、そこにホースがあることに気づいて、意識的にホースを撮っていくようになりました。
木村りべかさん(@piyooi)という大学の先輩と一緒に「庭先PT」という展覧会をして。木村さんは植木の写真を撮っていたんですけど「ホースと植木は相性が良いと思うので、一緒に展示をやりませんか」とお声掛けさせていただきました。

 

-たしか、中島さんってホースを育ててるんですよね?

 

中島:ホースをたくさん撮っているうちに「自分も劣化したホースがほしい!」ってなって、4本育てています。

屋外に置いておくと紫外線で表面が劣化して、いい感じに育つような気がして。

 

 

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▲ベランダにひっかけて育ててるホース

 

-これは最近の写真ですか?ぜんぜんキレイですね。

 

中島:まだまだです。もらったほうが早いんじゃないのとも思うけど、そうじゃないんですよ。自分でその場所に合ったものを育てたいんですよ。

 

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中島:これは、特に作家になることを考えてない頃に取ったホースの写真。
なんでホースを撮り始めたかっていうと、基本的にホースを主役として撮っている写真家はいないから。

誰も記録したことがないものを記録したいってところが盆栽おじさんとも通じますし、誰も美しいと思っていないものを写真で切り取ってみんながホースって美しいって気づいてもらえたらいいなって。

 

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中島:ちょっと引きで撮ってもホースっていいなと。この画面見たら、ホースが主役って思うじゃないですか。
緑色の画面に白い線がはいってるのがドローイングに近いな、と思い撮りました。

 

 

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中島:あっ、これが理想形のホースです。私もこう育てたい。

知ってます?バームクーヘンの上にキャラメルがのってて、焦がしてパリパリのやつ。あれにそっくりですよね。色まで変わってて、完璧です。

ホース鑑賞のポイントですが、そのホースが何のために使われているのかも是非確認して欲しいので、両端は必ずチェックしてください。

わたしがホースの写真をあげることで、いろんな人がいろんなところにホースがあるなって気づきを得てもらえたらと。

 

 

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-instagramでは、ホースに中島さんがタグ付けされてますもんね。

 

中島:これが最初にタグづけられたやつなんですけど。全く会ったこと無い人が、どこかでホースを見た時に
「あ、中島だ」と思って撮ってくださったらしくタグ付けしてくださったのですね。初めは本当に驚きましたが今は嬉しく思います。

 

 

【レポ後編】ゴミ袋が生き物に見える癖がある。あらゆるものに自己投影してしまう。

 


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